組織とは|組織とは意識的なシステムである

経営学(Business Admin.)
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組織の定義

 組織とは、何でしょうか。辞書を引いてみると、次のとおり定義されています。

一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団。また、それを組み立てること。

(デジタル大辞泉,2023)

 日常から目にする組織、そして現代において組織に属していない人は、ほぼいないと言っても過言ではないでしょう。上記の定義にもあるとおり、組織とは人によって構成され、それぞれ役割が割り振られている。つまりは、一人では成し得ない物事を集団となることによって、当該物事を達成しようとする、これを組織ということができるでしょう。

 組織の定義については、経営学分野においても多くの議論が行われています。組織の定義として有名なのが、アメリカ合衆国の経営学者チェスター・バーナード(Chester Barnard、1886年~1961年)による定義です。彼は、組織を次のとおり定義しました。

2人以上の人々の意識的に調整された活動ないし諸力のシステム

(英:a system of consciously coodinated activities or forces of two or more persons)

1938「経営者の役割」

 バーナードは、組織を一つのシステムとして考えたのです。先述のとおり組織は人によって構成され、その目的は、一人では成し得ない目標を達するためにあるという考察は、バーナードの定義にも当てはまります。「意識的に調整された」というのは、まさにこの目標達成のため、と解釈することができます。

 したがって、組織の定義については、分かりやすくまとめると、「一人では成し得ないことを達するために活動する集団」ということができます。

組織の成立要件

 上記では組織の定義について議論しました。では、その組織が正しく成立し、機能するためには、どうすれば良いのでしょうか。チェスター・バーナードは、組織が成立する要件として、次の3つを挙げています。

  • 共通目標
  • 貢献意欲(協働意思)
  • コミュニケーション

 1つ目が「共通目標」です。先述のとおり、組織はヒトによって構成されています。ヒトは、最も可変性が高く、コントロールが難しく、再現性が困難で、扱いによって差がつく存在です。つまり、ヒトは機械のように安定した機能を果たすのではなく、気分や感情によって日によって働きが異なるので、機械の様に扱うことができないのです。そのヒトを上手く動かすためには、目標を設定して、組織を構成するヒトが一つの方向性に働くようにする必要があるのです。目標がない組織だと、方向性も曖昧で、ただの烏合の衆となってしまいます。組織とは、一人ではこなすことができない課題を解決するためにあるのですから、組織全体が一つのシステムとして機能するためには、目標設定は不可欠といえるでしょう。

 2つ目が「貢献意欲(協働意思)」です。たとえ目標を設定したとしても、これが組織内に享有され、理解されなければ意味がありません。構成員全員が目標を理解した上で、それぞれの役割を自覚し、組織に貢献しようとする意欲をもって活動することが、組織が正しく機能する前提条件であると言えます。よく聞く目標や理念の一人歩きは、組織全体に享有されず、又は理解されず、この要件を満たしていない状態であると言えます。大切なのは、その組織が何のために作られ、何を成し遂げようとしているのかを、構成員が理解することであり、企業の社長や組織のトップは、これを浸透させるための施策を講ずることができるかが、当該組織の行く末を決めるのです。

 3つ目が「コミュニケーション」です。これも上記2つに類似していますが、組織としてこなす仕事は、分担される必要があります。一人ではこなせない仕事を正しく分配し、それぞれ構成員に役割を果たさせるためには、当該構成員同士がコミュニケーションをとり、連携する必要があります。正しくコミュニケーションが行われなければ、仕事が正しく処理されなかったり、重複したりと組織としての機能が発揮できなくなってしまいます。そのためにも、コミュニケーション、緊密な情報伝達、共有そして同期がなされることは、組織が正しく機能するための必須要件といえるでしょう。

 そして、上記3つの要件が上手く調和している状態を「内的均衡」といいます。

補論:組織と社会

 組織は、社会的な存在として、外部環境と結びついており、ここでいう外部環境とは、組織の外部を指します。バーナードは、組織が存続するためには、この外部環境とも調和しなければならないと述べています。組織と外部環境が上手く調和している状態を「外的均衡」といいます。加えて、1960年代からは、組織は人による行動のみならず、科学技術や市場などから成る複合的な社会的システムであるという考え方が出現し、『社会-技術システム論』という新たな学問分野が生まれました。この考え方は、後にコンティンジェンシー理論(環境適応理論)へと応用されることになります。

まとめ

 本記事では、組織について議論しました。要点をまとめると、次のとおりとなります。

  • 組織とは、複数の人によって意識的に構成されるシステムである。
  • 組織が正しく成立し、機能するためには、3つの要件を満たす必要がある
  • 組織は、外部環境(社会)と密接に関わっており、組織は内部と外部双方と上手く調和することが求められる

参考文献

  • 高尾義明(2019)『はじめての経営組織論』有斐閣。
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